2026.03.28
1. 雨漏りの原因は「昔の風呂の煙突」にありました 現場に到着して調査を開始すると、すぐに雨漏りの原因が判明しました。波板の途中から、昔使われていたお風呂の煙突がニョキッと飛び出していたのです。 現在は使われていないこの煙突ですが、波板との接合部分のコーキング(隙間を埋める防水材…
現地に到着してまず目に飛び込んできたのは、重厚感のある大きなお屋敷でした。屋根には「いぶし平板瓦」が整然と並んでいます。
「いぶし瓦」とは、焼き上げる最終工程で松薪などを燻(いぶ)し、瓦の表面に「炭素膜」を形成させたものです。お寺や城郭、伝統的な日本家屋によく使われる瓦で、渋い銀色の光沢が特徴です。
こちらの屋根は築30年以上が経過しているとのことですが、遠目から見てもその美しさは健在。いぶし瓦は塗装が必要なカラーベストなどとは違い、素材そのものの色が美しく、非常に高い耐久性を誇ります。
今回の点検で注目すべきは、使用されている瓦の種類です。 調査の結果、淡路島産(兵庫県)の大和窯業というメーカーが生産していた「ピアッタ50」という製品であることが分かりました。
現在、主流となっている瓦は1坪(約3.3平米)あたり40枚使用するサイズが一般的ですが、このピアッタ50は名前の通り「1坪あたり50枚」使用する、少し小さめの規格です。
残念ながら、現在はメーカーである大和窯業も消滅しており、この瓦は廃盤(生産終了)となっています。 もし瓦が割れてしまった場合、全く同じ新品を手に入れるのが非常に困難な「希少な瓦」といえます。
しかし、30年以上経っても平らな部分の瓦(平瓦)自体には大きな割れやズレはなく、非常にしっかりとした状態を保っていました。改めて「いぶし瓦」の耐候性の高さに驚かされます。
続いて、屋根の頂上部分である「棟(むね)」を確認しました。 こちらの屋根には、断面が三角形の形をした「三角棟瓦」が使われています。
30年以上前の施工ですので、瓦同士を固定するのには「銅線(どうせん)」が使われていました。瓦に穴を開けて針金で結ぶ工法ですが、経年劣化で銅線が緩んだり切れたりすると、瓦が動きやすくなってしまいます。
特に最近の巨大台風や大きな地震の際には、この旧式の固定方法だとズレが生じるリスクがあります。今すぐ崩れる心配はありませんが、今後の防災対策として検討しておきたいポイントです。
屋根の「谷」の部分(屋根面と屋根面が合わさる溝の部分)には、銅板製の「谷板金」が設置されていました。
銅板は高級な建材として知られますが、長年の雨水にさらされると変色し、稀に酸性雨などの影響で小さな穴が開いてしまう「電食」という現象が起きることがあります。
また、外壁と屋根が接する部分にある「熨斗瓦()」の一部に、わずかなズレを確認しました。
熨斗瓦(のしがわら)とは?
壁際からの雨漏りを防ぐために階段状に積まれた平らな瓦のことです。
ここがズレると、その隙間から雨水が侵入し、雨漏りの直接的な原因になりかねません。こちらは大きな被害が出る前に、部分的な積み直しや補修をおすすめしました。
点検を続けていると、屋根の頂上部に「棟換気」が取り付けられているのを見つけました。 これは小屋裏(屋根裏)にこもった熱気や湿気を外に逃がすための装置です。
設置されていたのは、昔懐かしいアルミ製の棟換気装置「棟風(むねかぜ)」でした。 私自身、職人として駆け出しの頃にはよく取り付けを行っていた馴染み深い製品ですが、最近ではあまり見かけなくなりました。
驚いたのは、その保存状態の良さです。 30年以上という長い年月、屋根の上で直射日光や雨風にさらされ続けてきたにもかかわらず、アルミ製なのでほとんど色褪せがなく、構造もしっかりと保たれていました。
最近の樹脂製やスチール製のものも進化していますが、当時のアルミ製品の質の高さ、そして「良いものを長く使う」という当時の職人のこだわりを改めて実感し、思わず胸が熱くなりました。
今回の点検結果をまとめると、瓦本体については「さすが、いぶし瓦!」と言えるほど良好な状態でした。
30年経っても塗装の必要がなく、美しさを保てるのは本物の瓦ならではの強みです。ただ、瓦自体が丈夫であっても、それをつなぎ止めている「漆喰(しっくい)」や「銅線」、下地の「防水シート」は寿命を迎える時期に来ています。
「うちは瓦だから一生大丈夫」と思われている方も多いですが、今回のような「廃盤になった瓦」を使用している場合、不具合を放置して瓦が割れてしまうと、修理が非常に大変になります。
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